進学お役立ち情報

進学お役立ち情報2019-08-06

【学ぼう産経新聞】私と新聞 将棋棋士・羽生善治 九段

【学ぼう産経新聞】私と新聞
将棋棋士・羽生善治(はぶ・よしはる)九段 
文章を簡潔にまとめるお手本

令和元(2019)年6月4日の対局で最多の公式戦通算1434勝を達成した将棋の羽生善治九段(48)は子供の頃、新聞の将棋欄を読むことが日課でした。

一般記事にも親しむようになり、今では新聞は社会の出来事を知る上で欠かせない存在となっています。一方で、「新聞は文章をまとめる上で良いお手本」と話しています。

◆深層部分は新聞で

公式戦最多勝記録を達成した翌日の新聞の記事を読みましたが、あまりの反響の大きさに驚きました。

 もともと新聞を読むようになったのは将棋欄(観戦記)がきっかけです。子供の頃、それを読むことが日課でした。当時はインターネットもない時代でしたので、将棋欄でどのような指し手があるのかを調べていました。

 年齢が上がってからは、世の中の動きを知るために新聞を読んでいます。昔と違って、新聞の文字も大きくなりましたね。最近の新聞は多様なものを取り上げている印象があります。読者も変わってきているからでしょうか。

 テレビでも多くのニュースが放送されていますが、ニュースのさわりや断片的な部分も多い。より深く、しっかりと取材されている新聞で「それはどういうことなのか」という深層部分をじっくりと読むようにしています。

 最近はニュースそのものがあふれていますね。そのニュースは本当なのか、フェイク(偽)ニュースではないのかと感じるときがあります。新聞では確実に裏が取れていないと記事として掲載されない。その点からも新聞は重要なものだと感じています。

 実は、新聞は最終面のテレビ欄から読んでいるんですよ。最後に1面を読むような感じで左にめくっています。単にその方が新聞をめくりやすいからですが。(左にめくれるように)新聞の向きを変えてくれたら1面から読むようになると思いますよ。

 重大ニュースは1~3面に掲載されていますが、いきなり重いニュースを読むよりも軽いところから読んでいきます。ある程度、文字を読み慣れてから政治とか経済とか、しっかり読むようにしています。それも子供のときからの習慣ですね。

 私はタイトル戦で地方に行ったときは、地元の地方紙を読むようにしています。ご存じのように、地方紙は全国紙と内容が違いますが、地元のニュースが多い地方紙は、その地域を知る上で読んでいておもしろいですね。

「新聞は行間を読めるようになればおもしろい」と話す羽生善治九段

◆興味を持ったら本へ

最近はインターネットなど各方面からニュースが入ってきます。そうした環境の変化の中、子供たちにとって新聞は、文章を簡潔に、必要なものだけをまとめることを習得するお手本だと思います。新聞は文字数が制限され、難し過ぎる表現も使ってはいけないようになっています。自分の考えを適切に、あるいは起こった事実をまとめることを学ぶためには新聞は良い材料だと思います。

 小学生や中学生に求めるのは難しいかもしれませんが、最終的には記事の行間を読むところまでたどりつければ、おもしろいと思います。ただ、最初は事実がきちんと描写されていることを知ることが大事です。

 新聞を読むことで、何かに関心を持つこともあります。そうしたら、その先は本を読むのがいいと思います。新聞で関心を持ったことについて、より詳しいこと、綿密な部分については本を読んで認識を高めていくことがいいのではないでしょうか。

 インターネットニュースにはセンセーショナルなものもありますが、これはニュースであって、ニュースでないものも多い。しかし、新聞は世の中で今、必要なことを伝えていくということなので、インターネットニュースとは役割がすみ分けされることになるのではないでしょうか。

◆AIとは共存共栄

将棋の世界もそうですが、最近は人工知能(AI)に関する記事が多く取り上げられています。子供たちにとっても今後、接することが多くなると思います。AIと共存共栄することは大事です。

 よく言われる予測として、今の子供は大人になったとき、それまでになかった仕事に就くという話があります。今、存在していない仕事に就くために何を学ぶべきか―ということが問われているのではないでしょうか。

 しかし、それは基本的には一般的な教養だと思います。読み書き、そろばん、コミュニケーション能力など、全般的に求められていることは今と変わらないと思います。(談)


【プロフィル】羽生善治(はぶ・よしはる)
昭和45(1970)年、埼玉県所沢市出身。二上(ふたかみ)達也九段門下で昭和57年、奨励会入会。60年、15歳で史上3人目の中学生プロ棋士としてデビュー。平成8(1996)年に史上初の全7タイトル独占、平成29年に史上初の永世七冠達成。タイトル獲得は史上最多の通算99期、一般棋戦優勝は歴代1位の45回。30年に将棋界初の国民栄誉賞受賞。同年、紫綬褒章受章。著書に『決断力』『羽生善治 闘う頭脳』など。=産経新聞記事より


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