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【教育デジタル革命】(4完) 求められる 講義型からの脱却 個別学習形式 自ら解決策探す

【教育デジタル革命】(4完) 求められる 講義型からの脱却 個別学習形式 自ら解決策探す

来年度以降実施される新しい学習指導要領で重視されているのは、児童生徒がそれぞれ自ら主体的に課題解決策を探し出す学びだ。それには従来の講義型の学習形式からの脱却が求められ、ICT(情報通信技術)の活用が欠かせない。一方、3日に結果が発表された2018年の国際学習到達度調査(PISA)では日本のデジタル機器の利用率が国際比較で極めて低いことが判明。デジタル時代を生き抜くことを運命づけられた子供たちを支える環境の整備が急務になっている。(木ノ下めぐみ)

 東京都千代田区立麹町中学の数学の授業。チャイムは鳴らないが、決められた時間に校舎4階にあるネット環境が整った多目的スペース「カフェテリア」に70人の生徒が集まってきた。

 それぞれ棚からタブレットとタッチペンを取り出すと、生徒たちはAI(人工知能)教材「Qubena(キュビナ)」のアプリを立ち上げ、黙々と問題を解き始めた。数学科の戸栗大貴教諭(32)が全員に向けて講義をすることはない。生徒の席の間を回り、「先生、この問題がわかりません」と声がかかると一人一人に答えていった。

 キュビナはAIが生徒の理解度をはかり、苦手の傾向なども分析して、それぞれに合う教材を提供するアプリ。習熟度に応じた個別学習形式で、早く学習が進めば2年生の間に3年生の学習範囲まで解き終える生徒もいる。

 麹町中では昨秋からアプリを導入。戸栗教諭は「従来の授業では、分からない子は周囲を気にして質問しづらい状況もあった。生徒一人一人がそれぞれマイペースに学習できるようになり、質問する子が増えた」と子供の変化を指摘した。

◆文房具のように

生徒が1人1台、家庭からパソコンを持ち込み、授業に活用する関西学院千里国際高等部(大阪府箕面市)。社会を教える米田謙三教諭(51)は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)についての授業で、生徒にインターネット上などで情報収集させた。授業の時間以外でも、いつでもどこでもネット上で調べてリポートに書き加えることができる課題だ。米田教諭は「日常的にデジタル端末に触れ、文房具のように使いこなすことができるようになることはもちろん、そのツールを使って生徒が個々に学びの解決策を見つけることを目的としています」と説明する。

 近畿大学付属高校(東大阪市)でも生徒が1人1台iPadを購入。化学・生物の教諭でもある教育改革推進室の乾武司室長(56)は授業で、生徒にインターネット上で調べた内容を説明する動画作品を作らせ、クラスの教材として使っている。「生徒が自分で調べてきた内容を自らの考えとしてまとめ、説明するのがこれからの学習。そのためにはデジタル技術、端末は欠かせない存在になっている」と強調した。

◆塾では学習検査

学校教育現場を離れたところでも、ICTを利用して子供の個性を生かそうとする取り組みも進んでいる。

 奈良県や大阪市で学習塾を展開する「ひのき塾」などが導入しているのが、トワール(大阪市)が提供する「NOCC(ノック)教育検査」だ。タブレット端末などを使い、インターネット上で質問に回答していくと、性格特性(EQ)や知能指数(IQ)を瞬時に測定できる。17種類の知能検査や心理検査を掛け合わせた検査で、独自のアルゴリズムを使うことで子供の得意・不得意、将来の成績の急落のリスクなども予測し、生徒一人一人に合った学習指導案を提示できるという。ひのき塾で指導する中島清訓さん(37)も「生徒の個性を効率的につかめ、サポートもしやすくなった」と手応えを話す。トワールの担当者も「これまで教員の直感でつかむしかなかった生徒の特性を客観的に可視化することで、教員の負担も減らせる時代になる」と説明し、今後学校への普及も視野に入れている。

■記者はこう思う ICT整備に地域間格差

教育担当になって約半年、いくつかの私立校のICT教育を取材した。タブレット端末を駆使し、プログラミングでロボットに動きを覚えさせる児童。生徒が画面に書き込んだ意見を吸い上げ、一斉に表示する電子黒板。動画編集アプリを使って調べた内容をまとめる生徒―。遠い昔、学生だった自分の頃とは全く違う学びにいきいきと目を輝かせる子供たちがいた。

 ところが先日、わが子の参観日で公立小を訪れたときのこと。児童の机上には紙の教科書とノート、鉛筆が広げられ、担任が黒板にチョークで字を書く。大いに見覚えのある光景が広がっていた。

 「小学校が日本で初めて設置されてからまもなく150年。社会は大きく進歩したが教室は何も変わらない」。ある私立小でICT教育に取り組む教諭が、危機感をにじませ発した言葉を思い出した。

 文部科学省は1人1台の教育用パソコンやタブレット端末の普及を目指し、ICT環境整備に力を注ぐ自治体も増えてはいる。しかし、整備が遅れる自治体では、情報端末1台を7人で使う状況があるなど、地域間格差も生じている。

 経済協力開発機構(OECD)が3日に結果発表したPISAで、日本は授業でパソコンなどを活用する割合がOECD加盟国で最下位と分かった。真偽が入り交じる情報あふれるデジタル時代に、子供たちが正しい情報、学びたい内容を選びとる環境を整えるのは大人の仕事。一日も早いICT環境の充実を求めたい。(木ノ下めぐみ)

=産経新聞の記事から

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