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【教育デジタル革命】(2)未来型教育 学習状況を可視化 授業中の発言から 理解度や感情分析

【教育デジタル革命】(2)未来型教育 学習状況を可視化 授業中の発言から 理解度や感情分析

AI(人工知能)を活用して、児童・生徒の学習状況を可視化しようという取り組みが京都で進んでいる。AIが子供たちの授業中の発言を分析することで理解度だけでなく感情の変化まで教員にリアルタイムで伝えることができるといい、一人一人の個性に応じた細やかな指導を目指す。京都市は「未来型教育」を確立するために実証実験を進めており、ゆくゆくは「京都モデル」として定着させたい考えだ。(小川恵理子)

◆京都モデル

京都市立加茂川中学校の理科室。生徒が囲む実験台の中央には500ミリリットルのペットボトルほどの大きさの黒いマイクが置かれていた。

 「難しいね」「解き方が分からないな」

 マイクは生徒が漏らした声を集音し、連動するAIシステムが誰がどんな発言をしたか、どれぐらい話したか、会話への割り込みはあったのかなどを解析。生徒の感情の変化までを把握し、教員が持つタブレットにリアルタイムで表示する。

 教員は誰が理解につまずいたのか分かり、その場でより詳しく説明することもできる。また、良いことを言えば、発言を拾って褒めて学習意欲を高められるという。

 教員は手にしたタブレットのほかに、腕にはスマートフォンを身につける。発言が少ない生徒がいれば、スマホが振動して、通知してくれる仕組みだ。胸にもピンマイクをつけており、教員自身の発話量も記録されるため、一方的な授業になっていないかも確認できる。

 京都市は児童・生徒一人一人に応じたきめ細かい学習指導と、教員の指導力向上を目指して、NECや京都大学術情報メディアセンターと協力し、AIを利用した未来型教育の確立を模索している。昨年度から実証実験を行い、将来的には「京都モデル」として発信したい考えだ。

 京都市が未来型教育の環境整備を急ぐ背景には、今、教育現場で急速に広まる「協働学習」への対応に迫られていることがある。

◆AIを活用

 協働学習は教員による一方的な授業ではなく、児童・生徒がグループ活動を通して能動的に学ぶことを目的とする学習形態で、子供たちは自分の意見を述べるだけでなく、仲間と協力することを学べる。ここでの教員の役割は、会話内容を把握して、意見を整理することを手伝うこと。また、授業に対するつまずきにすぐに反応して指導することも求められる。ただし、いくつものグループで行われている複数の会話を教員1人で把握するのは実質不可能。そこで期待されているのがAIの活用だ。教員の〝死角〟をカバーし、授業の質の向上を手助けすることが可能になるという。

 市教委学校指導課の佐々木圭係長は「現時点ではまだ教員支援の側面が大きいが、児童や生徒側も分からない部分をAIを利用して教師がすぐに把握できることで、児童・生徒の意欲や学習能力の向上が期待できる」とその意義を語る。

 京都市が昨年10月~今年3月にかけて、小学校の社会、算数、理科、中学校の理科の計10回行った実証実験では、AIを活用した授業の利点や課題が浮き彫りになった。

◆利点と課題

AIは「難しい」「分からない」といった子供が漏らしたネガティブな意味を持つ単語や一人一人の発話量を認識し、教員に伝えて児童・生徒を素早くフォローできることを実証。一方で、発言の中にはAIに認識されにくいものがあることが判明。単語が誤変換されたり、会話の途中で認識されなくなっていたりした例があるといい、佐々木係長は「児童や生徒は声が高く、単語で話したりすることが多いため誤変換が生じやすい」と分析している。また、方言の認識も難しいことも明らかになった。

 実証実験では、教員に大量の情報がいっぺんに寄せられることになり大きな負荷がかかることも問題として浮かび上がった。さらに本格導入にあたってはAI分析によって可視化された児童・生徒の発言量や内容を成績に反映させるための新たな評価基準の策定も急務となる。

 取り組むべき課題は多いといえるが、京都市教委は今回の実験を「今後の『物差し』となる結果が得られた」と評価。今年12月と来年2月にも実証実験を進める。今後、AIの認識能力がさらに向上することで、授業中のきめ細やかな指導だけでなく、指導案作成などへの応用にも期待をかけている。

 未来型教育が「未来」の話でなくなる日も近いかもしれない。

=産経新聞の記事から

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